6年間の大学院生活と新しい生活

本日2022年4月1日付で東京大学社会科学研究所に特任研究員として着任しました。

それに伴って、2022年3月31日で東京大学大学院教育学研究科の博士課程を満期退学しました。

 

学部を卒業した後、約10年間出版業界で働き、会社を辞めて大学院に進学し、修士2年+博士4年で計6年。大学院は自分にとって本当に居心地がよく、毎日毎分、自分の問題意識から出発した問いについて追究できる本当に幸せな環境でした。

 

計6年間の大学院生活がひと区切りということになり、とはいえ引き続き本郷キャンパスにはいるわけですが、今日は久しぶりに、なんだかこの春は新しいフェーズに入るのだなとしみじみした気持ちになりました。

 

引き続き研究ができることのありがたさを噛み締めながら、研究員としての業務で社研に貢献しながら、博論を粛々と進めながら、「女性が働くこと」に関する社会学的研究に対する貢献を目指しながら、新たな気持ちで日々に向き合いたいと思います。

 

 

ブルデューもこんなこと言ってた

iCloud上のメモを整理していて、しばらく前(2019年11月)に大学院の仲間たちと雑談しているときに書いたメモが出てきた。

 

社会科学における技術(わざ)の頂点にあるのは、きわめて重要な、いわゆる「理論的」問題と、じゅうぶんはっきりとしたいわゆる「経験的な」対象、ごく些細で、そのうえ取るに足らないものとみえることの多い対象とを結びつけることのできる能力です。社会科学では、対象が社会的・政治的に重要であれば、それだけでその対象を扱う発言の重要性も保証されたと考える傾向が強すぎるようです。自分の取り組む対象の重要性によって自分の重要性が測られると最も考えたがる社会学者、たとえば現在では国家や権力に関心をもつ社会学者が、方法論的手続きにいちばん無関心である理由はおそらくそこにあります。じっさいには対象をどのように構築したかという点こそが重要です。ある思考法の威力がもっともはっきりとあらわれるのは、社会的重要性の低い対象を科学的対象として成り立たせる能力のなかにおいてであり、あるいは同じことですが、社会的重要性を有する重大な対象を思いもよらない角度からとらえることで、その対象を科学的に構築し直す能力のなかにおいてです。

 

友人が、何かの流れで「ブルデューがこういうこと言ってるよ」って教えてくれて、かなりグッときて、この文章は折にふれて読み返してる。

 

それはそうとして、もう一つメモされていて、こっちのことはすっかり忘れてた。

博論に取り組んでいる今、しみじみ噛み締めた一節。

すべてのことに当てはまりそうな話だけれど、ブルデューもこう言ってたと思うと、ありがたみを感じる。

 

わざを継承する(p271)

・研究を合理的計画としてとらえる能力

投資の収益性を最大にし、使える時間をはじめとするもてる資源を最適配分すること

 

 

 

気になった論文(2021/1/18)

link.springer.com

 

アブストだけ、本文未読)

・米国と日本を比較しながら、「妻は夫より収入を得てはならない」という社会規範を検証。

・日本では妻の収入が夫より多い確率が10%ポイント上昇すると、妻の労働力率が8%ポイント低下。

・一方、米国では上記について有意な関連がない。

・日本は米国よりも、妻の労働力参加の意思決定が社会規範と密接に関係している可能性。

 

link.springer.com

 

(こちらもアブストだけで本文未読)

・日本のデータ。

・祖父母による子どもの教育費支援に対する税制優遇措置は、若い世代に提供される機会を広げる可能性。

・祖父母の資金拠出と家族支出の関連性を検討。

・祖父母からの経済的支援のばらつきは、子どもの教育に対する家族の支出とは関連していない。

気になった論文(2022/1/13)

気になった論文。

 

link.springer.com

スイスで、保育料の補助と女性の労働供給との関連を検証。

・地位の低い親の労働供給、特に女性の労働供給を高めるのに効果的

補助金は保育料総額の25%で望ましい効果を発揮し、それ以上の補助金水準では限界効用が減少

 

link.springer.com

20カ国のデータから、男女の不平等度と収入の統合・管理の方法の違いを検証。

ジェンダー平等が進んでいる国では、既婚カップルは一緒に収入をプールして管理する傾向にある一方、ジェンダー平等が進んでいない国では、夫婦の一人が収入を管理している。

ジェンダー平等が進んでいる国では、同棲カップルは、収入を別々に関する傾向がある。

・夫婦の収入の扱いについて、管理とプールを別々に扱う必要がある。

2021年に観た映画・ドラマ

振り返ってみると、2021年に映画館で観た映画は2本だけだったけれど、アマプラ、ディズニープラス、apple tv で隙間時間にみた映像作品はそこそこあった。

 

備忘録的に書いておく。

 

・1月

『TENET』(映画、配信)

『Once upon a time in horrywood』(映画、配信)

『The Morning Show』(ドラマ、配信)

スキャンダル』(映画、配信)

ビリーブ 未来への大逆転』(映画、配信)

 

・2月

ブックスマート』(映画、配信)

ストーリーオブマイライフ』(映画、配信)

 

・3月

なし

 

・4月

ハスラーズ』(映画、配信)

大豆田トワ子と三人の元夫』(テレビドラマ、配信)

 

・5月

『サイエンス・フェア』(映画、配信)

 

・6月

なし

 

・7月

『プロミシング・ヤング・ウーマン』(TOHOシネマズ日比谷)

 

・8月

『モダン・ラブ』(ドラマ、配信)

 

・9月

『ジョーカー』(映画、配信)

『ロングショット』(映画、配信)

『クルエラ』(映画、配信

『ナイブスアウト』(映画、配信

 

・10月

『007 スペクター』(映画、配信

 

・11月〜12月

『テッドラッソ』(ドラマ、配信)

『The Morning Show シーズン2』(ドラマ、配信)

 

・12月

『なぜ君は総理大臣になれないのか』(映画、配信

『ミラベルと魔法の家』(TOHOシネマズ池袋

 

ジェンダーや女性の生き方を扱っている作品は、(直接的ではなくても、)長い目でみると、研究していく上での発想や視野の広さに寄与する部分もなくはないんじゃないかと思って(なんだか言い訳がましい)、積極的に観たいところ。

 

とはいえ、なかなかまとまった時間がつくれないので、朝メイクしてるときとか、在宅昼ごはんの時とかに、ちょこちょこみている。

 

映画館で観た2本のうちの一本、『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、公開前から絶対観ないといけない作品だ!と思って、公開後すぐに観に行った。

 

『ミラベルと魔法の家』は、新聞で広告を観た息子(3歳)が観たいと言い出したので、はじめて息子と映画館で観た思い出。

 

観た作品で面白くなかったものは一つもなくて、すべて観てよかった!!と思えるものだったんだけれど、中でも2021年にもっとも印象に残った作品を挙げるならば、

『The Morning Show』だった。

 

ちなみに、今年のお正月は2本映画を観ることができて(『Don't look up』と『Last night in soho』)、どちらもびっくりするほど面白かった。

 

またどこかで、ジェンダーを扱う映画の感想を書きたいところ。

会社員だった私が東大院試に合格した勉強法

私は大学の学部(同志社大学経済学部)を卒業して約10年経ってから、

大学院(東京大学大学院教育学研究科)に入学しました。

 

最近、会社員を経て(あるいは会社員をしながら)大学院に行きたいという知人から、

どのように院試対策をしたのか聞かれる機会が多いため、一度まとめておきたいと思います。

 

結論から言うと、私はこの院試対策の予備校に通いました。

(回し者ではないですよ)

www.subarulc.jp

 

この予備校にたどり着いた経緯なのですが、

たしか「院試対策 文系 予備校」とかで検索をして、たまたま出てきたんです。

 

サイトに訪れたとき、正直「なんとなくあやしい」という印象を持ちました。

(何がというわけではないのですが、なんとなくサイトの雰囲気が?)

 

でも、入学を考えている人向けに無料で個別の面談があるということだったので、

話を聞くだけ聞きに行ってみようと思い、面談の予約をしたのでした。

 

その面談で、高橋先生という方とお話しし、「あやしくない、良さそう」と思って、

入学したという経緯です。

 

私が受講した具体的な内容と期間は、以下の通りです。

【内容】

私が受講したのは以下の3つ。

①記述問題対策の演習:  毎週水曜日(夜)

②研究計画にコメントをもらう : 随時

③ 英語対策の授業:  毎週土曜日(お昼頃から夜まで)

【期間】

私が受験した研究科の受験日は9月〜10月で、

受験する年の4月から通いました。

受験本番までの、約半年間通ったということになります。

 

会社員をしながら院試の準備をしていた自分にとって重要だったのは、平日夜or土日に通えるということ。

 

英語対策は毎週土曜日、記述問題対策は水曜夜に開講されていたので、

まず、この点をクリアしています。

 

私はこの予備校に通う時間+「平日の朝会社に行く前」と「日曜日」に、

院試対策の勉強をしました。

 

(当時は子どもがいなかったので、子どもがいる現在から考えると、

自分のためだけにこれだけ時間を使えたのは贅沢だなという感慨...。

 

ただ、やや脱線しますが、院試の少し前に、ある日突然「会社で(男性)上司の声がよく聞こえない...頭の中で人の声が反響する...」というそれまでに経験したことのない状態になったことがありました。

 

病院に行ってみると、「低音性難聴」という診断。

それで声が低めの男性上司の声がよく聞こえなかったわけです。

 

原因ははっきりしなくて、ストレスとか寝不足で発症するよう。

この時期、知らぬ間にストレスがかかっていたのかもしれません。

 

なお「低音性難聴」は、「イソバイド」という飲み薬で治りました。)

 

話を戻しまして、私が通った予備校の感想をジャンルごとに。

①論述問題対策と、②研究計画書

私は「教育社会学」という分野の受験をしたわけですが、

指導をしてくださる高橋先生はこの分野のご専門ではありません。

 

なので、ここでのご指導は、主に「論述問題」と「研究計画書」の一般的な考え方。

ただし、その一般的な考え方が、会社員を10年して大学から長く離れていた私には、わからなかったところなので、

ここで大きな「型」のようなものを教えていただいて、

そこから自分での対策が、一気に的を得たものになったと思います。

 

③英語対策

これが本当にためになりまして、

独学ではここまで短期間で伸びなかっただろうと感じています。

 

具体的に何をやったかというと、

国立大学文系院試の過去問をまずは解いてみる。

(基本的には学術書の一部をただただ和訳するという問題。)

解いた後に、高橋先生が、和訳にあたってどの部分がポイントかというのを

解説してくださる。

 

という流れです。

 

当時の私は、会社の仕事の中で英語に触れる機会はほとんどなく、

日本語の学術書を(趣味的に)読む機会はあっても、

英語論文を読むということは、少なくとも日常の中ではほとんどない、という環境でした。

 

なので、はじめは過去問を解いても本当にトンチンカンな訳し方をしていたのですが、

この授業で、和訳の際にポイントになる「関係代名詞」や「副詞節」について解説していただき、

そこからみるみる過去問が解けるようになって、「楽しい!!」という感覚でした。

 

10月に院試が終わって希望する研究科に合格し、

それ以降にどこかを受験する予定はなかったのですが、

高橋先生の英語の授業が本当に勉強になるし、自分の英語力が上がっていく感覚が楽しかったため、

年度末まで授業を受けさせてもらったほどです。

(たしか「本科生」的な形態で入学したので、年度中は+αの費用は発生せずに、

授業を受けることができました。)

 

大学院に入学して随分時間が経ちますが、

大学院に入ってまず感じたのは

英語の論文を読めないと研究はできない!

(当たり前なんですが、院試前は目の前のことに精一杯で、そこに思い至らず。

大学院に入学すると、まずは修士の授業で、英語文献の講読を大量に課されるので、

どんどんそれを捌けないとついていけない!

さて自分で論文を書くという段になっても、

英語論文どんどん読めないと進まない!)

 

つまり、この予備校で英語を勉強したことは、

院試対策という意味だけではなく、研究をしていくために必要なことだったと感じます。

 

数年前に、その高橋先生が、『詳解 大学院への英語』という書籍を出版されています。

(発売当初、東大の本郷書籍部でも話題書コーナーで推されてました)

 

文系大学院の院試対策の方法に迷われている方や、

予備校に通う時間的なリソースがないという方は、

一度この本を手に取られてみるといいかも知れません。

 

このところ、人から聞かれることが多い話題だったので、自分の経験をまとめてみました。

どなたかのお役に立てば嬉しいです。

BTSと出会った一年前の話。

それは、一本の動画がきっかけだった。

 

昨年の12月、韓国で兵役をめぐる法律が変わったというニュースを新聞で読んだ日、

(はっきり覚えてないけど、この記事とかだったかな?)

www.asahi.com

 

youtubeでこの動画がサジェストされてきた。

www.youtube.com

 

おそらく、このvogueのチャンネルの「73 Questions」というシリーズ(ハリウッドセレブが、記者が立て続けにする質問に、自宅を紹介しながら答えるというもの)の動画が好きで、よく見ていたから、同じチャンネルの動画がサジェストされたんだと思う。

 

(脱線するんだけれど、このエマ・ストーンの動画がすごく好き)

www.youtube.com

 

K-popに関心を持ったことはなかったし、そのときはBTSという固有名詞も、新聞記事ではじめて知ったくらいだったので、

普段だったらクリックしなかったと思う。

 

でもこの日は、「BTSの存在がきっかけで、韓国の兵役に関する法律が変わった」というニュースを見たばかりだったので、

「これがそのBTSか」という興味で何となくクリックしてみた。

 

そして、なんの気なしに、見ていたんだけれど、

「ん??」「ん???」「ん?????」

 

この8分半ほどの動画を見終わったとき、

なににそんなに魅了されたのか自分でもわからなかったんだけれど、

すっかり心を掴まれてしまった。

 

初見の感想はというと、

こんなに端正なお顔立ちのVが自分の映像を見て

「こんなに顔がむくんでるの見たことない。昨日の夜に食べたチャジャン麺のせいかな?」「何時に食べたの?」「夜中の3時かな」って会話をしてるのがシュールだなとか、

「ピアノトンカンティン」って言ってるJinさんがかわいいなとか、

そんな漠然とした感想しか言語化できなかったんだけれど、

とにかく何かに魅了されてしまい、、、

 

なおかつYouTubeでいくらでも映像にアクセスできるものだから、

いろんなパフォーマンス動画を見始めたら止まらなくて、

文字通り「沼」にはまってしまった。

 

これまでたまたま触れる機会がなかっただけで、

他のK-popグループにも、自分はこんなに魅力を感じるのだろうかと思い、

最近人気があると思しき他のグループの動画もいくつか見てみたけれど、そちらには特に触手が伸びず。

 

そこから、なんで私はこんなにこの人たちに惹きつけられるのだろうと、

目についたネット記事を片っぱしから読んでみた。

 

こういうのとか。

https://www.newsweekjapan.jp/tagsearch/BTS&os=10

 

でも、なんで自分自身がこんなにBTSに引きつけられるのかは、なかなかわからなかったんだけれど、

ユリイカK-pop特集を読んで、「なるほどこういうことか」と思うことがあった。

 

漫画家の渡辺ペコ先生がイラストとともに寄せていた言葉。

“恋をしよう”ではなく“愛されよう”でもなく

“自分を愛そう”と言い続けるあなたたちに心底驚き

今もずっと感動し続けています。感動は嫌いだったのに。

どうもありがとう。

 

自分が惹きつけられるのは、そのメッセージ性だったのか!

と、渡辺ペコ先生の言葉でまずは認識したのでした。

 

そこから約1年、BTSにどれだけ勇気づけられたかは言葉にできない。

これからは定期的に自己満記録を残そうと思います。

 

ちなみに私はJiminちゃん推しで、息子はV推しです。